今日、盆栽は、小さなワクの中で、ひとにぎりの仲間と、楽しみを分かち合うだけのものではなくなりました。盆栽は、日本文化の一つの精華であると同時に、世界に向かってひらかれた普遍的な「緑の芸術」として、その美的・社会的・国際的価値を高める必要に迫られているといえるでしょう。
このことは、今日、地球的規模における環境保全が叫ばれている事実からもあきらかです。「緑化」はその中心的テーマとなっています。盆栽は、その緑化の「シンボル」としてもっとも適した魅力をそなえているものといえましょう。つまり、緑の芸術・盆栽は二十一世紀最大の人類の課題をリードする位置にあるのです。位置にふさわしい評価をえるためには、心ある人々の感動を呼び、生命に直接訴えかける力をもった質の高い作品を作出し、発表しなければなりません。それが、とかく利欲に傾きがちな人間の意識改革を先導し、人類社会に大きく貢献する結果につながるでしょう。切迫した環境問題は、すぐれた盆栽の出番を待っている、といっても過言ではありません。
したがって、こうした時代の要請に正しくこたえる態勢をととのえることが、今日の日本盆栽界に課せられた急務であると考えます。
態勢をつくるうえで、なすべきことは多々ありますが、まず出発点として重要なのは、「盆栽作家」というものの存在を確立することです。作家なくして作品はなく、作品なくして芸術はありえないからです。盆栽人みずからが「盆栽作家」であることを深く自覚し、同時に社会からも広くその存在が認知されることが大切なのです。
盆栽が「緑の芸術」として、また自然と人工を調和させた綜合芸術として、世界各地で賞賛されていることは、まことに喜ばしいことです。